なぜ施設では敬語が使われにくいのか?現場のリアルと改善のヒント

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「タメ口で話すスタッフ、あなたの施設にもいませんか?」 介護施設や福祉施設など、人と深く関わる現場では、スタッフの言葉づかいが信頼関係や印象に大きな影響を与えます。しかし実際には、敬語があまり使われていない現場も少なくありません。また、「〇〇ちゃん、かわいい」と利用者さんに対して平気で言う職員もいる現場もあります。本記事では、その背景にある理由と、改善のヒントを紹介します。


敬語が使われにくい4つの理由

1. 親しみやすさを優先する文化

スタッフの中には「敬語だとよそよそしい」と感じる人もいます。利用者と家族的な関係を築きたいという善意から、あえてタメ口を選ぶケースが多く見られます。特に高齢者施設では、距離感を縮めるコミュニケーションが好まれる傾向があります。

しかし、高齢者の生きてきた時代を、今一度把握する必要があります。現代は、両親に対してもなれなれしくあだ名で呼ぶことが普通という風潮です。また、自分が良いから人もそれで良いという自分勝手な考えが多いです。しかし、高齢者の生きてきた背景では上の人を敬う風潮にあります。身をしっかりわきまえながら生きてこられた方々です。さて、そんな忠誠心をもって生きてこられた高齢者の方に、果たして「敬語だとよそよそしい。ため口がいい」なんて自己中心的な思いで関わられて嬉しいのでしょうか?一部の人は、ニコニコとしながら受け入れてくれると思います。しかし、一部の人は「馬鹿にしてる」と思うかもしれません。また、「○○ちゃん(あだ名)、かわいいなぁ」と平気で利用者さんに対して言う職員もいますが、これも同じことです。

大事なことは、関わる相手が誰であろうと敬う姿勢でいることです。そして、穏やかに柔らかい表情や笑顔でいれば、それで十分です。このポイントを押さえておけば、自然な敬語・会話となり、相手も他の人も心地良くなるはずです。変に親しみやすさを優先して、自分勝手な考えで、”ため口”で話す、”あだ名”で呼ぶということは敬う姿勢から外れ、人によれば消耗させる可能性があることを意識しておくことが大切です。

2. 業務効率を優先する現場の実情

忙しい日常業務の中で、一つ一つ丁寧な敬語を使う余裕がなく、つい簡潔な命令口調になってしまうことも。例えば「おむつ替えるよ」「ご飯食べて」などの短い言葉が使われがちです。

余裕が無いのだから仕方ないと考えている人は、人と関わる仕事ということを忘れていると言わざるを得ません。限られた時間で多忙な業務をこなさないといけないため、無理ないかもしれません。しかし、相手がいる以上相手を大切にする関りが大切です。まず、相手と関わらない時の自身の行動(準備など)において無駄な動きが無いか見直していくことが大切です。

すると、「もっとこうした方が良いかもしれない」と良い方法が見つかるかもしれません。忙しい日常業務の中においても、丁寧に関わる余裕を作っていく工夫と努力が何よりも大切です。それが出来てプロであると思います。

3. 上下関係の無意識な逆転

「介護する側が上、される側が下」という感覚が無意識に働き、タメ口になってしまう場合もあります。これは特に新人スタッフにとっては気付きにくく、職場全体での意識改革が求められます。

「介護する側が上、される側が下」という感覚に陥ってしまうのは、「できないところをしてあげている」という意識が根本にあるからでしょう。介護は、「してあげる」ものではありません。生活を支える役割のある貢献度の高いものです。尊厳を守るべき者です。そこのポイントを間違えるから、上下関係を作ってしまうのだと思います。

4. 職場の空気に流される

周囲のスタッフが敬語を使っていない場合、それが「普通」だと感じてしまい、新人もそれに倣ってしまう傾向があります。職場の雰囲気に流されるのは、無理もないところもあります。

しかし、この場合も根本的な考えやポイントがずれて、「してあげる」という上から目線となり、相手を敬うことを忘れてしまっている可能性があります。もし、相手を敬うことを忘れていなければ、職場の空気に流されて「敬語使っていないことが普通」とはならないはずです。


なぜ敬語使われていないことが問題なのか?

敬語を使わないことは、一見すると親しみやすくて良いことのように思えます。しかし、

  • ご家族や見学者に対する第一印象が悪くなる
  • 利用者本人が「軽く見られている」と感じる可能性がある
  • 接遇の評価が下がり、施設全体の信頼にも関わる

など、さまざまなリスクが潜んでいます。

実際に、いきなり自分よりもはるかに年下の赤の他人に「ごはん食べて」「トイレ行くよ」等命令されてみると、どんな心境になるのかよく分かるはずです。


言葉づかい改善の実践ヒント

■ 言い換え事例

  • 「できる?」→「ご一緒にやってみましょうか?」
  • 「おむつ替えるよ」→「おむつの確認をさせていただきますね」
  • 「ちょっと待って」→「少々お待ちいただけますか?」

上記の例はあくまでも参考にということです。実際、いちいちこんなこと言わないといけないのか?と思う人も多いと思います。なので、そこまで堅苦しくせずに「〇〇しましょうか?」「〇〇しますね」など、基本的に「です」「ます」調を意識すると良いと思います。

■ 朝礼での共有

毎朝、スタッフ同士で「本日の丁寧ワード」を1つ紹介し合うと、自然に言葉の質が上がっていきます。

■ 研修資料の導入

接遇マナーや言葉づかいに特化した研修コンテンツを定期的に実施することで、職員の意識向上が期待できます。


おわりに

敬語は「壁」ではなく「思いやり」の表現です。また、尊厳を守る者として相手を敬う姿勢を持ちながら介護をしていくことが大切です。これが、好印象や信頼関係良好になることのポイントとなるでしょう。施設の印象や信頼関係をより良くするために、まずは一人ひとりの言葉から見直していきませんか?

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