【そば通が恋する町】あなたは「出石そば」を知っていますか?一皿ずつ味わう、噛むような旅の魅力

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◆「出石そば」を食べたことはありますか?

ざるそばでも、盛りそばでもない。

小皿に盛られ、何皿も重ねて食べる独特のそばが、兵庫県豊岡市の出石(いずし)という町にあるのをご存じでしょうか?

その名も「出石そば」。一見小さな変わり種に見えますが、食べれば食べるほど奥深く、全国のそば好きが“わざわざこの町を訪れる”理由がわかってきます。

出石そばは、ただのご当地そばではありません。食を通じて歴史や文化、町の空気まで丸ごと味わえる、いわば**「食べる観光資産」**なのです。


1章|旅の始まりは、一枚の小皿でした

豊岡市出石町。
城下町の風情が今も色濃く残るこの町を歩いていると、あちこちに「皿そば」の看板が見えてきます。ふらりと暖簾をくぐると、白磁の小皿に盛られたそばが5皿、10皿と積まれて提供されました。

「これが一人前ですか?」

そう尋ねると、店員さんはにこやかに「うちは皿そばですから」と返してくれました。

一皿の量は少なめですが、味わい深く、つるりと喉を通る感覚が心地よく、気づけば20皿を平らげていたのです。


2章|出石そばの“特別な理由”とは?

出石そばの魅力は見た目のインパクトだけではありません。その背景には、歴史と職人技が詰まっています。

出石そばは、江戸時代に信州(長野県)の上田藩から移封された仙石氏が、信州のそば職人を連れてきたことにより生まれました。信州そばの文化と、出石の風土が融合し、今のスタイルが形づくられたのです。

さらに特筆すべきは、自然薯をつなぎに使っていることです。この自然薯によって生まれる強いコシと滑らかな喉ごしが、出石そば特有の味わいを作り出しています。


◆出石そばに小麦粉は入っている?そば粉の割合について

出石そばのつなぎについては、お店ごとに異なるのが現実です。主に以下の3つのスタイルが見られます。

スタイル 内容 小麦粉の有無 特徴
自然薯つなぎ そば粉+自然薯 小麦粉なし 出石伝統の製法。粘りとコシが強く風味豊か
二八そば そば粉8:小麦粉2 小麦粉あり 一般的で打ちやすく滑らか。多くの店舗で採用
十割そば そば粉100% 小麦粉なし 風味が強く、そば本来の味を楽しみたい人向け

つまり、出石そば=十割そば、というわけではありません。自然薯つなぎの店もあれば、小麦粉を使用した二八そばの店もありますし、最近では十割そばを提供する専門店も増えています。

小麦アレルギーのある方や、グルテンフリーを意識されている方は、注文前にお店の方へ原材料の確認をすることをおすすめします


3章|五感で楽しむ出石そば

出石そばは、ただの郷土料理ではありません。まるで一つの体験型アートのように、五感を使って味わうことができます。

  • 視覚:白磁の出石焼に映える黒みがかったそば。美しい盛り付けが食欲をそそります。
  • 嗅覚:ゆでたてのそばから漂う香り。ふわりと立ち上る香気は、手打ちならではのものです。
  • 触覚:自然薯つなぎによる、つるつる&しっかりした弾力ある食感。
  • 味覚:薬味はネギ・わさび・卵・とろろ・大根おろしなど。好みで味を変化させながら楽しめます。
  • 聴覚:小皿を重ねる音、そばをすする音までもが食事の一部になります。

さらに、「出石皿そば通手形」という食べ歩きチケットも人気です。3軒のそば店を巡って食べ比べができるため、それぞれの打ち方や風味の違いを体感できます。


4章|町全体がそば屋のような情緒に包まれて

そばを食べ終えた後に町を歩くと、どこか懐かしく、静かな時間が流れていることに気づきます。

白壁の土蔵、石畳の小路、古民家を活かしたそば処。まるで一つのテーマパークのように町全体が「そばと歴史の世界観」で統一されています。

なかでもひときわ目を引くのが、明治初期に建てられた「辰鼓楼(しんころう)」。
日本最古級の時計台として、町の中心で時を刻み続けています。


5章|出石そばと一緒に楽しみたい豊岡の魅力

出石そばを目当てに訪れたなら、ぜひ豊岡市内の他のスポットにも足を運んでみてください。

  • 城崎温泉(車で約30分):風情ある外湯巡りが楽しめる、日本有数の温泉地です。
  • コウノトリの郷公園:コウノトリの野生復帰を目指す保護施設。自然との共生を感じられます。
  • 豊岡カバンストリート:地場産業「豊岡鞄」の直売店が立ち並び、品質の高い旅のお土産が見つかります。

6章|一皿ずつ、ゆっくりと人生を味わう

出石そばを食べて、私は「味わう」ことの意味を再発見しました。

スマートフォンを置き、そばをひと皿ずつ口に運びながら、今この瞬間に意識を向ける。誰かと静かに並び、皿を重ねていく時間。それはまるで、人生のひとコマひとコマを噛みしめるような感覚でした。

忙しさに追われる日常の中で、「一皿ずつ積み重ねるような旅」に出るのも、心のリセットになるかもしれません。


◆次の週末、“そばと静けさ”を味わいに出石へ出かけてみませんか?

たとえば、日帰りでも行けるゆったり旅。大阪・京都からなら電車や車で約2~3時間。朝出発すれば、お昼には出石の皿そばを堪能できます。

そば好きな方と一緒に、あるいは一人で“静かな贅沢”を楽しみに。次の週末は、時間を「噛む」ように旅してみませんか?

 

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