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『家に帰ります』と言われたら?認知症ケアのプロが教える、穏やかに対応する3つのステップ

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「家に帰ります」「もうこんなところにいたくない」。

認知症のある利用者さんが突然、険悪な表情で強い口調でそう言われると、どのように対応すれば良いか戸惑ってしまいますよね。

「また始まった…」と、思わずため息をついていませんか?

認知症のご家族や利用者さんが突然、「家に帰る!」と強い口調で言われた時、どうすればいいか分からなくなりますよね。無理に「大丈夫ですよ」などと説得しようとしても、かえって事態はエスカレートしてしまう…。そんな経験はありませんか?

でも、安心してください。「帰宅願望」は、決して特別なことではありません。むしろ、利用者さんの心の中にある、大切な「思い」の表れです。その「思い」を感じ取り、寄り添った対応がコツとなってきます。

今回は、認知症ケアのプロが実践する、帰宅願望のある利用者さんと穏やかに向き合うための3つのステップをご紹介します。これを知れば、あなたも利用者さんとの時間を、もっと穏やかで安心できるものに変えられると思います。

 

ステップ1:まずは「傾聴」、そして「共感」する

帰宅願望が始まったとき、戸惑って困ってしまうことがあると思います。そんな時、一番やってはいけないことは、「説得」することです。

「ここがあなたの家ですよ」「今日は遅いから帰れません」と事実を伝えても、利用者さんはその言葉を理解できません。それどころか、「自分の気持ちを分かってくれない」とさらに不安や混乱を招いてしまいます。

そうではなく、まずは利用者さんの言葉をじっくりと聞いて、その気持ちに寄り添いましょう。実践例をあげたいと思います。

実践例:

  • 利用者さん:「家に帰らないと、おばあちゃんが心配するんだ」
    • NGな声かけ:「おばあちゃんはもう亡くなりましたよ」
    • OKな声かけ:「おばあちゃん、心配なんですね。おばあちゃんのこと、本当に大切に思っていらっしゃるんですね」

このように、まずは「気持ち」を受け止め、「あなたは大切な人を思っているんですね」と共感を示すことで、利用者さんは「分かってもらえた」という安心感を得ることができます。

また、「家に帰りたい」という言葉の裏には、実はさまざまな「本当の理由」が隠されていることがあります。その理由を理解することが、適切な対応につながります。

  • 昔の「役割」を求めているケース 「家に帰ってご飯を作らないと」「畑仕事に行かないと」といった言葉の裏には、「家族のために働いていた自分」「誰かの役に立っていた自分」という過去の役割を全うしたいという思いがあります。
  • 「見当識障害」による混乱 そもそも今いる場所がどこなのか、時間がいつなのかが分からなくなり、混乱から「自分の知っている安心できる場所=家」に帰りたいと訴えている場合があります。
  • 身体的な不調や不安 どこかに痛みや不快感があるものの、それを言葉でうまく表現できず、「安心できる家に帰りたい」という言葉になっている可能性もあります。

このように、帰宅願望は単なるわがままではなく、利用者さんの不安や混乱、過去の思いが複雑に絡み合って生じていることが多いのです。そのため、まずはその言葉の奥にある「本当の気持ち」に耳を傾けることが何よりも大切なのです。


 

ステップ2:話題を「過去」へと誘導する

共感できたら、次は利用者さんが「なぜ帰りたいのか」という気持ちの奥にある、「思い出」や「安心」を探ってみます。帰宅願望は、多くの場合、「昔の家にいた頃の温かい思い出」や「家族と過ごした安心感」を求めていることが多いからです。

実践例:

  • 利用者さん:「家に帰らないと」
    • あなた:「お家、どんなお家でしたか?広かったですか?」
    • 利用者さん:「うん、広くてね、庭には大きな木があったんだ」
    • あなた:「それは素敵ですね。お庭では、どんなことをされていたんですか?」

このように、利用者さんの言葉を足がかりに、昔の楽しかった思い出を尋ねてみましょう。会話が過去の出来事に移っていくと、利用者さんの心は自然と満たされ、不安な気持ちが落ち着いていきます。


 

ステップ3:現在の「安心できる環境」へとつなげる

過去の思い出を共有することで、利用者さんの気持ちが落ち着いたら、次は「今の場所が安心できる場所である」ことを感じてもらいましょう。

実践例:

  • あなた:「そのお庭の木、見てみたかったなぁ。ところで、お茶でもいかがですか?」
  • あなた:「そろそろ晩御飯の時間ですね。美味しいご飯、一緒に食べに行きましょうか?」

このように、「お茶を飲む」「ご飯を食べる」「好きなテレビ番組を見る」といった、利用者さんが安心できる日常の行動に誘ってみてください。過去の思い出から、今現在の「安心できる環境」へと自然に気持ちを切り替えてもらうことができます。

 

まとめ

帰宅願望は、介護施設の現場では良くあることです。しかし、自宅で過ごされている場合でも現れることがあります。その場合、利用者さんの心は「不安」で落ち着かない状況にあることが多いものです。自分の考える「あの安心感」を求めて、自宅であっても「家に帰る」と言ってしまいます。

認知症の利用者さんの「家に帰りたい」という言葉は、「安心したい」「大切な人と一緒にいたい」という、誰にでもある純粋な思いの表れなのです。

説得するのではなく、まずは落ち着いてゆっくりとその気持ちに寄り添い、共感してあげてください。そして、思い出話を共有しながら、現在の安心できる環境へとそっと導いてあげてください。

この3つのステップを実践することで、あなたも、そして利用者さんも、お互いにとって穏やかで優しい時間を過ごせるはずです。

ぜひ、この内容があなたも利用者さんも、穏やかな時間を提供できるようになることを心から願っています。

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