1. はじめに
老人ホームでは、利用者が安心して快適に過ごせる環境を整えることが重要です。しかし、それと同じくらい大切なのが、職員が落ち着いて働ける環境を作ることです。職員がストレスを抱えながら働いていると、それが利用者にも伝わり、施設全体の雰囲気が乱れる可能性があります。雰囲気が乱れると利用者にとっては居心地の悪さを感じます。そして、周辺症状（BPSD）と呼ばれる症状が出現しやすくなります。そうなると、職員も一層負担を感じるようになり、悪循環になります。
そこで、利用者と職員の両方が落ち着いて過ごせるための工夫について、考えていきます。
2. 利用者が落ち着ける環境作り
2.1 物理的な環境の工夫
利用者が快適に過ごせる環境を整えるためには、まず物理的な空間作りが重要になります。証明の明るさを適度に調整し、過度な刺激を避けることで、利用者がリラックスできる空間を提供できます。また、適温を維持することや、騒音対策を施すことで、より落ち着いた雰囲気を作り出すことができます。
快適な室内温度→室内の適温は20～25℃程度
快適な湿度→40～60%
さらに、家庭的な雰囲気を演出するために、温かみのある色合いの家具やインテリアを活用したり、季節の飾り付けや花を取り入れたりすることで、利用者が心地よく過ごせる空間を作ることができます。
安全対策も重要であり、転倒リスクの少ない家具配置やバリアフリー設計を取り入れることで、利用者が安心して移動できる環境を整えることができます。
2.2 コミュニケーションの工夫
利用者が安心して過ごせるよう、職員の声かけや接し方にも工夫が必要です。積極的な声かけを行い、利用者の気持ちを尊重することが大切です。
また、利用者のペースを尊重し、無理に急かさないことも重要です。一人ひとりの生活リズムを大切にし、リラックスできる時間を確保することで、落ち着いた環境を提供できます。さらに、職員が笑顔で接することで、利用者の安心感を高めることができます。
コミュニケーションのポイント
- 笑顔
- 目線を合わせる
- 適切なボディタッチ
- ゆっくり話す
2.3 不穏行動を防ぐための工夫
利用者が不安を感じると、不穏な行動が増えることがあります。これを防ぐためには、生活リズムを一定に保ち、食事・睡眠・活動の時間を整えることが重要です。また、レクリエーションや音楽療法を活用し、適度な刺激を与えることで、利用者の心を落ち着かせることができます。
職員間で情報共有を徹底し、一貫した対応を心がけることで、利用者に安心感を与えることができます。
3. 職員が落ち着いて働ける環境作り
3.1 業務負担を軽減する
職員が落ち着いて働くためには、業務負担の軽減が必要です。チームワークを活用し、一人に負担が偏らないよう役割分担を明確にすることで、無理なく業務を進めることができます。
また、ICTを活用し、記録業務などを効率化することで、作業の負担を軽減することができます。さらに、業務の優先順位を明確にし、緊急性の低い作業を後回しにするなどの工夫を行うことで、無駄な業務を減らすことができます。
3.2 ストレスを軽減する
職員のストレスを軽減するためには、定期的なミーティングを実施し、悩みや不安を共有する場を設けることが重要です。また、利用者の笑顔や感謝の言葉を大切にし、小さな成功を積み重ねることで、モチベーションを高めることができます。
適切な休憩を確保し、短時間でもリラックスできる時間を取ることで、職員が心身ともにリフレッシュできるようにすることも大切です。
3.3 職員同士の良好な人間関係を築く
職員同士の関係が良好であれば、働きやすさが向上し、施設全体の雰囲気も良くなります。「ありがとう」の言葉を意識し、お互いを支え合う文化を育むことが大切です。
また、うまくいった対応を職員間で共有し、学び合うことで、より良いケアが実現できます。役割分担を明確にし、誰がどの業務を担当するかを決めることで、負担の偏りを防ぐことも重要です。
4. 施設全体での取り組み
施設全体での環境作りの取り組みとして、利用者の安心と職員の働きやすさを両立するためのマニュアル作りが挙げられます。また、定期的な職員研修を実施し、スキルアップを図ることも有効です。
さらに、家族や外部機関とも連携し、環境改善を進めることで、より良い施設運営を目指すことができます。
5. まとめ
職員と利用者が落ち着いた環境で過ごせるためには、物理的環境の整備、コミュニケーションの工夫、業務負担の軽減とストレス対策の3つの視点が重要です。
小さな改善を積み重ねることで、職員と利用者の両方が安心できる施設作りを目指しましょう。
