兵庫県豊岡市にある城崎温泉は、山と円山川、海に囲まれていて自然豊かな場所にあり、1300年以上の歴史を持つ日本有数の温泉地です。古くから湯治場として人々に親しまれ、現在も“外湯めぐり”など独自の温泉文化を継承しています。
この町の魅力は、温泉だけではありません。幾度も自然災害を乗り越え、まちぐるみで文化と景観を守り続けてきた、”生きた歴史”がそこにはあります。
さらに、城崎には冬の松葉ガニや但馬牛など、食の魅力も豊富です。
この記事では、知れば知るほど魅力がある城崎温泉の歴史と名物グルメを紹介します。
城崎温泉の歴史
奈良時代:ひとりの僧が見つけた“祈りの湯”
城崎温泉の起源は、今から1300年以上前の奈良時代にさかのぼります。僧・道智上人(どうちしょうにん)が、病に苦しむ人々を救いたいと、千日間の修行を行った末に温泉が湧き出たという伝説が残っています。
当時の人々にとって、温泉は単なる癒しではなく、「神仏の力で与えられた恵み」だったのです。
中世〜江戸時代:外湯文化のはじまりと町の形成
平安〜鎌倉時代には、すでに湯治場としての利用が始まっていた城崎。
江戸時代になると、今の外湯めぐりの原型が整備され、まちは「誰もが入れる温泉文化の中心地」として発展していきます。
現在も残る「一の湯」や「御所の湯」などは、こうした時代から続く伝統のひとつ。
道沿いに連なる旅館や木造の町並みは、まさにその名残です。
大正時代:文学と出会った静かな温泉地
1913年、作家・志賀直哉が事故の療養で城崎を訪れました。
その体験をもとに執筆された短編小説『城の崎にて』は、今も多くの人に読み継がれています。
自然と静けさに包まれたこの町は、彼のような文人にとって、創作と内省の場となってきました。
それ以来、城崎は“文学が生きる温泉地”としても知られるようになります。
昭和〜平成:変化の波と再生への歩み
昭和後期には団体旅行の人気もあり、観光地としてにぎわいを見せた城崎温泉ですが、平成に入ると観光スタイルの変化や経済の影響もあり、一時は客足が遠のきました。
そこで、地域が選んだのは「まちぐるみの再生」。
景観の統一や外湯の再整備、浴衣文化の継承など、町全体で観光の質を高める取り組みが始まりました。
現代:文化・アートと共にある温泉地へ
近年の城崎温泉では、温泉だけでなく芸術・文化の振興も盛んです。
「城崎国際アートセンター(KIAC)」では、国内外のアーティストが滞在し、演劇や音楽、ダンスなどの創作を行っています。
また、「まち全体がひとつの宿」という考え方のもと、通りは“廊下”、外湯は“お風呂”、旅館は“部屋”というユニークな観光スタイルが定着しました。観光客は旅館に泊まりながら浴衣姿で外湯をめぐり、まちを歩いて楽しむことができます。
7つの外湯(さとの湯、一の湯、御所の湯、まんだら湯、鴻の湯、柳湯、地蔵湯)には、それぞれ個性があり、温泉好きにはたまらない体験ができます。
城崎温泉で味わいたい名物グルメ
城崎温泉の魅力は温泉だけではありません。海と山に囲まれたこの地域は、食材にも恵まれています。
松葉ガニ(冬季限定)
11月から3月にかけては、津居山漁港で水揚げされる松葉ガニ(ズワイガニ)が旬を迎えます。タグ付きの「津居山ガニ」は品質保証されたブランドガニとして知られ、旅館ではカニ刺しやカニすき、焼きガニなど、様々な料理で提供されています。
プリっと身がしまっていて、濃縮した甘みとうま味が口の中に広がります。そんな冬の津居山のカニは、絶品で口中に頬張った瞬間にきっと感激するでしょう。
但馬牛
但馬地方で育てられた黒毛和牛・但馬牛は、神戸牛や松阪牛の素牛としても知られる高品質なブランド牛です。ステーキやしゃぶしゃぶ、すき焼きなどで味わえ、口の中でとろけるような食感が特徴です。津居山カニと同じく、おいしさに唸るほど感激すること間違いありません。
地酒、スイーツ、食べ歩きグルメ
城崎周辺には複数の酒蔵があり、地酒も豊富。香住鶴をはじめとする清酒や梅酒は、湯上がりの一杯に最適です。また、黒豆ソフトや温泉まんじゅう、カニクリームコロッケなどの食べ歩きグルメも人気です。
オススメなのが、城崎ビネガーです。基本の「梅」「アセロラ&リンゴ」「ゆず&ジンジャー」など様々な種類のビネガーがそろっています。特に、梅ビネガーのソーダ―割は、梅ジュースのようなスッキリした味わいです。温泉上がりや夏の暑い日に、ごくごく飲みたくなります。
また、温泉卵も有名です。温泉街にて温泉卵作りを体験したり買って食べることが出来るので、非日常を味わうことができ、楽しい思いでにもなることでしょう。
湯・歴史・食を堪能する城崎の旅
城崎温泉は、歴史ある温泉文化に触れながら、自然や食の恵みを体感できる温泉地です。
湯に浸かり、文学の息吹にふれ、旬の味を楽しむ――そんな五感に響く旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。