観光ブームの裏で…増える文化財の破壊
コロナ明けのインバウンド観光が再び盛り上がりを見せる中、残念ながら「文化財が壊された」というニュースも目立つようになってきました。
最近、東京・渋谷区の明治神宮で、重要文化財に指定されている玉垣に「火」のような文字が削られる事件が発生しました。また、2023年には、奈良市内の寺で石塔の一部が壊される事件が発生しました。加害者は外国人観光客で、登って写真を撮ろうとした際に倒してしまったとのこと。さらに京都では、国宝級の建築物の近くで壁に英語の落書きが発見されるなど、文化財の損壊が社会問題になりつつあります。
私たち日本人が大切にしてきた歴史や文化が、あっという間に傷つけられてしまう――そんな現実に、ショックを隠せざるをえません。
なぜ文化財が壊されるのか? 4つの原因
こうした破損行為は、決して「悪意ある破壊」ばかりではありません。むしろ「知らずにやってしまった」というケースも少なくないのです。
① 文化の違い
たとえば海外では「石像に触れる」ことがOKな国もあります。日本では“触ってはいけない”という常識でも、他国から来た人にとっては当たり前の行為である場合があります。
② マナー情報の不足
案内板が日本語のみだったり、翻訳が不自然で意味が伝わらなかったりすることもあります。現地のルールが伝わっていないのも大きな要因です。
③ SNS映え重視の行動
「いいねが欲しい」「映える写真を撮りたい」という気持ちから、立ち入り禁止エリアに入ってしまう観光客も少なくありません。
注意書きを無視してまで写真を撮る行為が、結果的に文化財を傷つけてしまうのです。
④ 無知・無意識の行動
多くのケースで、「壊すつもりはなかった」と語られます。
その裏には「これは壊れるものじゃないと思った」「注意書きを見ていなかった」といった、文化財に対する認識の甘さがあるのかもしれません。
私たちにできることはある?
「文化財を守る」と聞くと、専門家や行政の仕事だと思いがちです。
でも実は、私たち市民にもできることがあります。
- もしマナー違反を見かけたら、勇気を出してやさしく注意する
- 不十分な多言語案内を見かけたら、自治体や観光協会に改善を提案する
- 子どもたちに、文化財の大切さやマナーを日常の会話で伝える
- 観光地でボランティアガイドやマナー啓発活動に参加してみる
私たち一人ひとりが「文化を守る担い手」になれるのです。
おわりに
他国の地に入れば、文化も常識も異なる。それは、当たり前のことです。ただ、無知なまま自国の常識のまま観光に来た結果、文化財を傷つけてしまうということになるという事実を今一度知ってほしいと思う次第です。他国の地に踏み入れる前に、最低限の常識をもって楽しんでもらいたいものです。
文化財は、その国・その地域の“記憶”であり“誇り”です。
そしてそれを守るのは、行政だけでなく、観光客自身、そして私たち住民の意識にもかかっています。
外国人観光客を責める前に、伝え方や受け入れ体制に改善の余地がないかも見直すべきなのではないかとも思えます。
日本の文化を守って、未来に残していくために。