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有料老人ホームの介護職員に、うつ、不安障害、不眠症が急増

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介護士の視点から語る、有料老人ホームの今

 

私は、有料老人ホームで働く一人の介護士です。この仕事は、人の人生の最期に寄り添い、その尊厳を守る、非常にやりがいのある仕事だと信じています。

しかし、近年、私たちの働く現場は、見えない疲労と葛藤に満ちています。私自身も含め、多くの同僚が、心身ともに限界を感じ、心の病を抱えるケースが増えています。

なぜ、こんなにも追い詰められているのでしょうか。その理由は、多岐にわたります。

 

心の矢面に立つ私たち

 

有料老人ホームは、その名の通り「有料」のサービスです。高額な費用を支払って入居されている方がいる以上、利用者様やご家族からの要求水準が高いのは当然のことかもしれません。

しかし、中には「これだけ払っているのだから、これくらいのサービスは当然だ」と、私たちのサービスを当たり前だと捉え、過剰な要求や理不尽なクレームを浴びせてくる方も、残念ながら存在します。

夜中にナースコールを何度も鳴らされ、ようやく駆けつけると、「ただの話し相手が欲しかっただけ」と言われる。食事の味付けに難癖をつけられ、何度もやり直しを求められる。入浴介助の際、少しの不手際を厳しく責められる。こうしたことは、決して珍しいことではありません。

一つひとつの出来事は、些細なことかもしれません。しかし、それが毎日のように、私たち個々の介護士に向けられることで、心は少しずつ、確実にすり減っていきます。まるで、私たちの心に直接攻撃を仕掛けられているかのような感覚です。

私たちは、技術や知識だけでなく、入居者様の心に寄り添うために、自分の心も差し出しています。その心が、理不尽な言いがかりによって傷つけられるたび、私たちは疲弊し、やがて心が燃え尽きてしまうのです。これが、多くの介護士が陥る「燃え尽き症候群」の現実です。

この心の疲労は、やがて身体にも影響を及ぼします。不眠症、不安障害、そしてうつ病。私たちが求めているのは、過剰な感謝ではありません。ただ、私たちが心を込めて行っている仕事に、少しでも敬意を払っていただければ、それだけで私たちは救われます。


 

責任と給与のギャップ、そして離職の連鎖

 

介護の仕事は、看護師と同様に、早番、遅番、夜勤と不規則なシフト制です。時には、高度な専門知識と技術が求められる、医療行為に近いケアを求められることもあります。しかし、残念ながら、私たちの賃金は、その責任の重さに見合っているとは言えません。

現在の日本の介護業界の低賃金は、国の政策が大きく影響しています。医療・介護業界の報酬は、政府の財政政策によって厳しく抑えられてきました。これでは、どんなに頑張っても、給料はほとんど上がりません。

「この給料で、こんなに大変な仕事はもう続けられない」

そう言って、多くの有能な仲間が、この業界を去っていきます。離職者が増えれば、残されたスタッフ一人ひとりの負担はさらに増します。

本来なら、丁寧に行うべきケアも、時間や人手の制約から、やむを得ず効率優先になってしまう。そして、それがまた、利用者様からのクレームにつながる。まさに、負の連鎖です。


 

施設長だって、一人で戦っている

 

「なぜ施設長は、クレーマーから末端の介護士を守ってくれないのか」

そう思う方もいるかもしれません。しかし、実は、施設長もまた、私たちと同じように、いや、それ以上に大きな葛藤の中にいます。

彼らは、利用者様からのクレーム対応の最前線に立ち、職員のメンタルヘルスを守り、経営も担う、多岐にわたる責任を負っています。関わりに難しさのある利用者様との向き合いの中で、施設長自身が心を病んでしまうことも珍しくありません。実際、多くの施設長が、その責任の重さに耐えきれず、中途で退職していく現実があります。

責任は重く、年俸は決して高くない。そんな不人気な施設長の仕事は、常に人手不足です。私たちは、施設長を「トップ」として見るだけでなく、同じ職場で働く仲間として、彼らの苦しみにも理解を寄せる必要があると感じています。


 

外国人スタッフと、揺れる日本の介護現場

 

現在、介護業界では人手不足を補うために、外国人スタッフの受け入れが進んでいます。彼らの真面目さや熱意に、私自身も感銘を受けることは多々あります。

しかし、この流れに対して、複雑な感情を抱いている高齢者の方々がいることも事実です。

「外国人にお風呂に入れてもらうのは気が進まない」

「言葉が通じない人と、信頼関係を築けるだろうか」

そうした不安の声を聞くことがあります。これは、決して彼らが偏見を持っているわけではありません。見慣れない文化や言葉、そして、ニュースで報じられる犯罪の増加に、不安を覚えるのは、ごく自然な感情です。

私たちが求めているのは、外国人労働者の受け入れを停止することではありません。彼らも、私たちと同じように、この国で一生懸命働いている仲間です。

しかし、この問題の根本には、日本人の介護職員の賃金が低すぎるという問題があります。もし、この仕事が「報われる」仕事になれば、より多くの日本人が介護の道を選び、外国人スタッフを迎え入れる際にも、お互いが安心して働ける環境を築くことができるはずです。

そのために、早急な賃金改革が必要です。消費税をゼロにし、社会保険料の負担を軽減する。そして、その財源は、国が持つ「通貨発行権」によって生み出す。これは、経済政策の専門家の方々が提言されていることです。

私たち介護士は、ただ目の前の仕事に集中したいだけです。そのために、安心して働き続けられる環境を、国や社会に求めているのです。


 

高齢者の心に、そっと寄り添う

 

最後に、入居者様自身の心の健康についても触れておきたいと思います。

有料老人ホームに入居したばかりの高齢者の方は、環境の変化によるストレスから、不眠症やうつ病を患うことがあります。朝早く目が覚めたり、夜中に何度も目が覚めたりする「睡眠障害」は、うつ病の隠れたサインであることも少なくありません。

思考力が低下し、「もうダメだ」と泣き言ばかり出てきたり、物事に対する意欲が低下したり。こうした症状が見られたとき、私たちは、いち早くその変化に気づき、専門の医師に相談することを促す必要があります。

私たちが目指すのは、ただ身体的なケアをするだけではありません。入居者様の心の声に耳を傾け、心の平穏を取り戻せるようサポートすることです。だからこそ、私たちが働く施設に、専門の診療所が併設されているか、心療内科の医師と連携が取れているかは、とても重要なポイントになります。

私たちは、ただ、感謝されたいだけじゃない

 

私たちは、感謝されるために働いているわけではありません。でも、私たちの心と身体がボロボロになっていく中で、「ありがとう」という言葉が、どれだけ私たちの心の支えになっているか、伝えたいのです。

私たちが心穏やかに働ける環境、そして、入居者様が心安らかに過ごせる施設。それを実現するためには、私たち現場の介護士だけでなく、施設長、経営者、そして社会全体が、介護という仕事の価値を再認識し、支え合っていくことが不可欠です。

この記事が、介護の仕事の現実を少しでも多くの方に知っていただくきっかけになれば、これ以上嬉しいことはありません。

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